久山町は2014年、会計検査院の指摘で、展示専用のモデル住宅(地元産木材使用の国交省の事業)補助金を子育て支援センターとして他用途に使っていたことがばれ、補助の89%の1984万円を国交省に返還した。
▷2014年(平成26年)12月13日西日本新聞朝刊 久山町の「目的外使用」を伝える小さな小さな記事。
佐伯、県へ決裁文書の「延命措置」
私は2015年9月10日に県から開示された文書を2021年(令和3年)2月24日「再開示請求」で再取得。公文書は5年で廃棄されるものが多いので、原本はすでに福岡県は廃棄しているが、私がかつて開示請求したものは控えとして残っているため、それを再度情報公開請求手続きで取得することで、その控えがさらに5年残ることになる。ゆえに県には、まだ久山町が国交省へ補助金申請した際の書類一式が残っている形になっている。
これはその「再開示」の分をアップしたもの。ゆえに2010年に入手した時より、画像は粗くなっていることはご容赦を。
▷2010年9月10日、県が佐伯に開示し、2021年2月24日、改めて私が県に「再開示」させ、延命措置を施した、久山町から提出のモデル住宅事業関係文書一式。
まず、今回の「再開示」の①開示決定通知書 ②前出、2014年12月13日付け西日本新聞の「県と協議」した根拠となる記録への開示請求に「記録不存在」の回答になる不開示決定通知書。③久山町とやり取りした「モデル住宅」に係る文書の開示決定通知書。
*個人名が黒塗りとなっているのは、個人情報保護条例に基づく措置のよう。当人が開示請求しているのだが(苦笑)。
▷令和3年2月24日に県が保有する久山町のモデル住宅事業関係の提出文書の「延命措置」のための情報公開請求手続きをとった。その開示決定通知。下記②③の通知書や、写真資料もすべて「再開示」され、控えが県でさらに5年保存されることになる。
▷2015年(平成27年)9月10日入手。上記、2014.12.13西日本新聞で「県と協議」して久山町はモデル住宅を子育て支援施設として使ったという言い分の根拠となる記録は県は保有しておらず、作成もしていないという回答。
▷上記②と同じ日に「モデル住宅」について久山町からあがってきた文書は開示されている。
県が国交省への町の橋渡し役、県が決裁しているのだが。
1)2009(平成21年)年2月25日 久山町に県からモデル住宅事業への配分額22176万6000円の通知。
2)2009年(平成21年)3月26日 久山町にモデル住宅事業の交付申請書が送付。
3)2010年(平成22年)3月29日 前年度に久山町から提出された久山町からの「概算請求書」を県は審査し、国交省の補助金の支出官に提出すべく決裁。
4)2010年(平成22年)3月31日 国交省へのモデル住宅事業の「実績報告書」送付の決裁。
「モデル住宅事業」は平成20年・21年度の単年度事業。この間、町がこの地元産の木材を使った展示専用モデル住宅のPRを行い、パンフレットを作成し、実際、建物を建設した後、2010年4月5日に国交省から町の口座へ補助金が入金された。しかし、この時は地域住宅モデル普及推進事業としての「事業期間」は終わっており、後は町で建物を管理して独自で運営して下さいというもの。ただし、建物は7年間のモデル住宅展示後は自由に使って良いけど、その間に他用途へ使用することは厳禁とされていたのだが…。
展示専用住宅じゃなく、木材を使った他の有用な建物にするため「悪用」しようと思う側には、この国交省の補助金のモデル住宅事業は「大変補助率が良い、格好の事業であったようだ。
▷モデル住宅事業は単年度の事業。『PR活動し、パンフも作成し、建物を建てたら金額の金額の3分の2までを国交省が補助しますよというもの。建てた後は事業主(この場合久山町)で運営して下さい。ただし、7年間は他の用途には絶対使用しないで下さい。』というもの。年度末の3月末に決裁され、下記資料にもあるように、新年度の平成22年4月5日に国交省から久山町の口座に後助金が入金されている。
これがモデル住宅?おかしいと思わなかった?
当時久山町が添付した「モデル住宅」写真資料
▷倉庫に会議室…えっ、会議室って??こんなとこで家族会議でもやるの?(爆)
▷多目的トイレまである。障害を持つ家族向けのモデル住宅なの?
厚かましいのでは?久山町
▷事実上この鏡文が、県が決裁出した文書でしょ。これ、国交省に送ったら、先方も「自治体が申請してる案件だし、福岡県がチェックしてるんだから、たぶん大丈夫だろう」みないに気がゆるむのでは。
▷久山町長 久芳菊司の名で補助金の概算要求。なんと厚かましい。
▷県の支出決議書。国交省から久山町に平成22年(2010年)4月5日に入金予定とある。住宅防災事業に必要な経費って書いてあるのに、子育て支援施設に使っていいわけがないでしょ。
国交省への実績報告
▷平成22年度(2010年度)、県が取りまとめ、国交省へ送付した久山町のモデル住宅事業「実績報告」。平成25年度は目的外使用の指摘のため報告はなし。それまで3年間、来場者数を報告している(▷右下赤枠の中)。奇妙な建物の外観であり、個々に書かれている「来場者」の感想も3年間変わっていない。そして何より、見学者数が、3年ごとに、常識はずれに上昇し続けているのに注目(▷ペン書きの数字)。
この実績報告は、久山町が橋渡し役の県に報告書を送り、県が自分たちの様式にまとめて国交省へ送っている。毎年、この
奇妙なモデル住宅らしからぬ外観と、異様に多い見学者数をみて、県も国交省もおかしいと思わなかったのか。
▷ちなみに、担当課は当時の政策推進課。現西村町長と佐伯久副町長が「事業担当職員・責任担当課長」として担当していた。
*この平成22年度の報告書はネットでも検索・ダウンロードが可能です。
▷実績報告の来場者数の覧を拡大したもの。初年度平成22年度の876名もすごい見学者数なのだが、翌年度3043名、翌々年度4002名と、尋常でない数が報告されている(※平成25年度は目的外使用の発覚のため報告なし)。
*【文言訂正と解説】:私の議会報告(11/14発行の12月議会展望号)では「見学者」と表記していますが、正確には成果報告では「来場者」となっています。この点は訂正します。
しかし、意味あいは同じ。あくまでもこの建物、モデル住宅は「展示限定」。展示用モデル住宅としての来場者(見学者)を書かなければならないはず。町は「嘘ではない、来場者だ」と言うだろう。佐伯の間違いだ、と私のデータ把握の信憑性を揺さぶるだろう。論点ずらしだ。しかし、来場者=見学者は絶対成り立たない。子育て支援センターの利用者を来場者として書けるはずがない。町は勘違いして利用者を記入していたのではない。町は久芳菊司前町長時代から「適正にやってた。しかし、会計検査院には自分たちの主張は通らなかった」のスタンスをまったく崩していない。確信犯だ。
カズワン沈没事故を連想
▷2022年5月23日毎日新聞記事。事故から1ヶ月後、国のチェック体制の甘さを指摘した特集。
今年4月に発生した知床遊覧船カズワンの沈没事故。多くの観光客がずさんな運行管理のために犠牲となった痛ましい事故。事故発生前、国交省が運行会社の業務内容を監査する機会があったが、非常にチェックが甘く、見落としが多々あった。これが悲劇を生んだ。この一件は、久山の補助金目的外使用にも言える。重なってみえる部分がある。2010年4月5日、国交省からモデル住宅事業補助金が久山町の口座に入金されて1ヶ月後、町は建物を子育て支援センターとして違法に転用した。久山町の悪意を見抜けなかった国交省の失態である。間に福岡県が入っていることも油断の要因となったのか?
この場合、実は福岡県には法的責任はない。申請書類の橋渡しをしただけで、「仲介」したわけではない。詰めの段階で、国交省には建物の現地確認を行なう必要があったが、行なわれていない。建前上、申請時には現地確認を行なわなければいけないはずだが、形骸化してしまっていた。もし、国交省が出先の九州地方整備局に依頼して現地確認を行なっていたなら、未然に久山町の違法転用は防げていただろう。県庁は建物の書類をみて、おかしいとは思わなかったのか?
「カズワン」のネット記事にもあるように、「性善説」で、まさか自治体が国をあざむいて補助金を得ようなんて大それたことはしないだろうと国交省は鼻から油断していたのだろう。県は本当に久山町の「狙い」を知らなかったのか?真相はどうなのか。
この件、まだまだ根が深い。国交省補助金の側面だけではない。本来なら建たなかったはずの木造の「子育て支援施設」の建物に厚生労働関係の補助金が色々付いてきているのである。その議論はいまだ全くなされていないのだが。